親が元気なうちに聞いておけばよかったこと

相続のご相談を受けていると、お客様からこんな言葉を聞くことがあります。

「もっと早く聞いておけばよかった。」
この一言には、たくさんの後悔が込められています。

銀行口座のこと。

生命保険のこと。

不動産のこと。

もちろん、それらも大切です。
でも、私が一番「聞いておけばよかった」と思うのは、父の想いです。

私は18歳のときに父を亡くしました。

父は48歳。
高校生の頃にがんが見つかり、約2年間の闘病生活を経て亡くなりました。

父が亡くなって20年以上が経った今でも、「あのとき聞いておけばよかった」と思うことがあります。

仕事で何を大切にしていたのか。
どんな夢があったのか。
子どもたちにどんな人生を歩んでほしかったのか。
今となっては、もう聞くことはできません。

相続というと、財産をどう分けるか、税金をどう抑えるかという話になりがちです。

もちろん、それも大切です。
しかし、私は相続の仕事を続ける中で、それ以上に大切なものがあると感じています。

それは、「親の想いを家族へ引き継ぐこと」です。

実際に相続の手続きを進めていると、ご家族から昔話を聞くことがあります。

「父はこんな人だった。」
「母はこの土地を本当に大切にしていた。」

そんな話をしている時間は、不思議と皆さん笑顔になります。
財産を分ける時間ではなく、家族の歴史を振り返る時間になっているのです。

一方で、何も話を聞いていなかったご家族は、

「どこの銀行を使っていたんだろう。」
「保険には入っていたのかな。」
「この土地はどうして残したかったんだろう。」

と、一つひとつ手探りで進めることになります。

だから私は、相続対策は「書類を準備すること」だけではないと思っています。
家族で話す時間をつくることも、大切な相続対策です。
難しい話をする必要はありません。

「最近、何か心配なことある?」
「この家にはどんな思い出があるの?」
「子どもの頃、一番楽しかったことは?」

そんな会話から始めてもいいと思います。
何気ない会話の中に、その人らしさや家族への想いがたくさん詰まっています。

いつか相続という日が訪れたとき、思い出すのは預金残高ではなく、親と交わした言葉なのかもしれません。

今でも、「もう一度話ができるなら聞いてみたい」と思うことがたくさんあります。
だからこそ、お客様には同じ後悔をしてほしくありません。

親が元気なうちだからこそできる会話があります。
その時間は、決して当たり前ではありません。

今日、ご両親に一つだけ質問するとしたら、あなたは何を聞きますか?

その一つの質問が、いつか「聞いておいてよかった」と思える、大切な思い出になるかもしれません。

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