父が亡くなって20年経って気づいたこと

私は18歳のときに父を亡くしました。

父は48歳でした。

高校生の頃にがんが見つかり、約2年間の闘病生活を経て亡くなりました。
当時の私は専門学校に入学したばかり。
これから社会に出ようとしている時期でした。

父が亡くなったときのことは、今でもはっきり覚えています。

「もっと長生きしてほしかった」

「もっと話をしたかった」

「もっと一緒に過ごしたかった」

そんな思いばかりでした。

父はホテルの用務員として働いていました。
ボイラーや空調設備、電気関係など、壊れたものは何でも直してしまう器用な人でした。
寡黙でしたが、とても優しい父でした。

そんな父との思い出の中で、今でも忘れられないことがあります。
子どもの頃の私は好き嫌いが多く、よく食事を残していました。

そのたびに父は、
「出されたものはちゃんと食べなさい」
と叱りました。

私は屁理屈ばかり言う子どもだったので、
「じゃあ、お皿も食べなきゃいけないの?」
などと言って父を困らせていました。

当時は父の言葉の意味が分かりませんでした。

しかし、自分が親になった今なら分かります。
父が伝えたかったのは好き嫌いの話ではなく、食材を育ててくれた人への感謝や、料理を作ってくれた人への感謝、そして命をいただいていることへの感謝だったのだと思います。

父が亡くなった後、家族にはさまざまな手続きが待っていました。

遺族年金の手続き。

役所への届け出。

住宅ローンの確認。

当時は周りに詳しい人も少なく、自分たちで調べながら進めるしかありませんでした。
役所や年金事務所へ相談に行っても、担当者によって説明が違うように感じることもありました。

何が正解なのか分からず、不安になったことを今でも覚えています。
そんな中で、家族が本当に助けられたことがあります。

それは父が住宅ローンを組む際に加入していた団体信用生命保険でした。

父が亡くなったことで住宅ローンの残債がなくなり、家族は住み慣れた家を手放さずに済みました。

当時の私は保険の仕組みを理解していませんでした。
しかし今振り返ると、それは父が家族のために残してくれた大きな愛情だったと思います。

父は多くを語る人ではありませんでした。

「もし自分に何かあったら家族はどうなるだろう」

そんな話を聞いた記憶もありません。
それでも結果として父は家族を守ってくれていました。

父が亡くなってから20年以上が経ちました。
今でも父を知る方から昔話を聞くことがあります。

「お父さんには昔助けてもらったよ」

「本当に器用な人だったね」

そんな話を聞くたびに、父はもうこの世にはいないのに、どこか近くで見守ってくれているような気持ちになります。

私は現在、相続や資産形成の相談を受ける仕事をしています。
父の死が直接この仕事を選ぶきっかけになったわけではありません。

しかし相続のご相談を受けるたびに、残された家族の気持ちは少し分かるような気がします。

相続対策というと、節税や財産の分け方に目が向きがちです。
もちろんそれも大切です。

ですが、私が本当に大切だと思うのは、家族への想いを残すことです。

遺言書を書くこと。

生命保険を準備すること。

家族と話し合うこと。

それらは単なる手続きや対策ではありません。
「大切な家族に困ってほしくない」
という愛情の形だと思っています。

準備をしていることで、愛を伝えることができる。
父が亡くなって20年経った今、私はそう感じています。

相続対策とは、財産を残すことだけではありません。

大切な人へ想いを残すこと。

私はこれからも、そのお手伝いをしていきたいと思っています。